「土のデザイン」第二弾!「豊かな土」の勉強会

前回のキックオフから約1カ月がすぎ、「土のデザイン」プロジェクトの第2回ワークショップが2022年10月7日にオンラインで行われ、総勢10名の参加者がともに学び合いました!

当日のタイムテーブルは主に2つの部に分かれています。

まず最初に、九州大学のトッキー(稲村徳州)先生から「豊かな土」についての講義があり、
続いて(株)リ・パブリックの尾形さんから土に関するフィールド調査(福岡県糸島市と鳥取県米子市)の経験が共有されました。

最近、「豊かだなあ」と感じた瞬間は?「そこにある自然・生物とのつながりは?」

ワークショップが始まる前に、「豊かと感じた瞬間」をみんなでシェア:

「甑島(こしきしま)で釣りをしてきた時!」

「料理の飾りで葉っぱをとろうとしたとき、紅葉しかけの色のグラデーションを見てに幸せな気持ちになった。」

「フランス人のゲストを畑にお連れしたら、(自分にとっては)旬を過ぎてしまったトマトを美味しいと食べてくれた。葛の花をみせて、香りもかいでもらったらすごく喜んでくれた!」

「自分の畑に植えている人参の下に、もぐらが走り回って土がスカスカになってしまったことがショックだったけれど、いろんな生物がそこに生きている豊かさもあるんだなと感じた」

その中で、
「地面に四つ這いになってトマトを食べるという初めての体験をした」という特別な体験もありました。(※鳥取のフィールドリサーチへのヒント)

「豊かな土」とは?

「豊かな瞬間」の共有でウォーミングアップをした後に、
トッキー先生より「『豊かな土』とは?」というテーマで講義を行いました。

まず一番左の円が示すのは、野菜のおいしさに着目した、いわば人間中心の視点。
真ん中の円は、生物多様性を重視した土壌中心の考え方。
そして一番右の円は、よりマクロな視点として、地球や生態圏を中心とした「環境/世界」の視点を説明したものです。

視点を変えることで、同じ土壌でも解像度の違う価値があることがわかります。

例えば土壌の微生物環境が豊かになった、という変化だけでその価値は連鎖し、作物から、周辺流域環境の改善から、産業の経済的な発展の可能性まで繋がっていきます。

少し前までは、土は主に自然資本や食材などと結びつけられることが多かったのですが、近年、土は炭素固定に寄与できる可能性が研究され(それまでは農業での炭素排出が課題でした)、Jクレジット制度とリンクするようになりました。

Jクレジット制度とは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を、クレジットとして国が認証する制度のことです(経済産業省のH Pより)。

この制度を活用すれば、土をわかりやすい経済的価値につなげることができるため、より多くの人の好奇心や興味を喚起できるのではないでしょうか。

では、具体的には、どうすれば豊かな土を作ることができるのでしょうか。

トッキー先生からはこの図の3つのポイントを出していただきましたが、その中でも「竹のバイオ炭作り」は薩摩川内市らしい資源活用のヒントです。

鹿児島県は全国一の竹林面積を持ち、薩摩川内市も県内1、2の竹林を持つエリアです。同時にその育成管理による課題を抱えています。

薩摩川内市の竹林

え!竹のバイオ炭!?

「竹バイオ炭」がいきなり登場しましたが、竹バイオ炭とは何でしょうか?

竹バイオ炭は竹を炭化したバイオ炭のこと。
では、そもそもバイオ炭(Biochar)とは何でしょう?

バイオ炭は、生物資源を材料とした、生物の活性化および環境の改善に効果がある炭化物を指します。

畑の土にバイオ炭を入れることによるメリットは以下の通りです。

(引用:岸本文紅、2022。「バイオ炭の農業利用と脱炭素~国内外の動向と今後の展望」)

2020年9月末にJ-クレジット方法論「バイオ炭の農地施用」が策定され、農地にバイオ炭を施用し、難分解性の炭素を長期間土壌に固定することによる排出削減がクレジットとして認証できるようになりました。これにより、バイオ炭がこれまで以上に注目されているのです。

竹バイオ炭はどのように作るのですか?

農林水産省は、バイオ炭を「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」と定義しています。

実際、自分たちで作ることはできるのでしょうか?

その答えを探すために(株)リ・パブリックのスタッフは、9月26日に九州大学のホール先生の糸島にある農場を訪れ、竹炭の製造について学びました。

この学びの旅はショート動画にまとめられています。ご覧ください。

協生農法

「豊かな土」というテーマをさらに探究すべく、(株)リ・パブリックのスタッフたちは、10月1日に、鳥取県の「協生農法™️(シネコカルチャー)」の実験圃場を訪れました。

協生農法の実験圃場

協生農法™️」は、SonyCSLが研究・論理体系化・実践をおこなっている農法です。これは、「農業を超えた活動であり、人為により自然を上回る生物多様性を実現し、地球の回復にとって必須の表土の再生を実現する『拡張生態系』」を特徴とする農法なのだそうです。

具体的には「無耕起、無施肥、無農薬、種と苗以外一切持ち込まないという制約条件の中で、植物の特性を活かして生態系を構築・制御し、生態学的最適化状態の有用植物を生産する」という特別な露地作物栽培法です。(出典:協生農法実践マニュアル

最後に、「協生農法」農園のフィールド調査を動画でお伝えします。

次回は、竹バイオ炭作りの実践!

今回のワークショップ勉強会はオンライン形式でしたが、次回10/21(金)は薩摩川内市内の畑で実際に手を動かして竹バイオ炭を作ります。

バイオ炭作りのレクチャーもありつつ、乾いた竹を持ち寄りますが、果たして成功するのでしょうか!?

午後は、これからどんな土を作るか?この畑をどんな場所にしていこうか?と、新しい形の市民型農園アイディエーションも行います。

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Satsuma Future Commons

Satsuma Future Commons(薩摩フューチャーコモンズ)は、薩摩川内市・九州大学大学院芸術工学研究院が共同で推進する、サーキュラー都市デザインの先駆者が研究・実践を行う国際的でオープンな拠点です。